はじめに
個人事業主として仕事を受けるようになって、最初に戸惑ったのが「見積もりの作り方」でした。
会社員時代は、見積もりは営業や上司が対応することが多く、設計者が金額に向き合う機会は多くありません。しかし独立すると、見積もりは自分で作らなければなりません。
安すぎると利益が出ず、高すぎると仕事が取れない。この記事では、私が20年の経験を通じて身につけた「機械設計の見積もりの考え方」をお伝えします。
設計工数の見積もり方法
設計費の見積もりの基本は、「作業時間 × 時間単価」です。
タスクを分解して工数を積み上げる
【工数積み上げの例:搬送設備フレームの設計】
タスク 工数(時間)
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仕様確認・打ち合わせ準備 2h
概念設計・レイアウト検討 8h
3Dモデリング(フレーム) 16h
3Dモデリング(部品詳細) 12h
図面作成(組立図・部品図) 20h
部品表作成 4h
設計変更対応(予備) 8h
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合計 70h
工数を積み上げたら、リスクバッファを10〜20%加算します。
70h × 1.15(バッファ15%)= 80.5h → 81h として計算
時間単価の設定
時間単価は、経験・専門性・市場水準をもとに設定します。
【時間単価の目安(機械設計・個人事業主)】
経験年数・専門性 時間単価の目安
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3〜5年(汎用設計) 3,000〜4,500円/h
5〜10年(専門設計あり) 4,500〜6,000円/h
10年以上(高度専門性あり) 6,000〜10,000円/h
※ CATIA・SolidWorksなど特定CADの高スキルは単価が上がる
※ 業界・取引先によっても相場は異なる
材料費・外注費の見積もり
設計の見積もりには、設計費だけでなく材料費や外注費が含まれる場合があります。
【材料費の見積もり方】
① メーカー・商社の定価から算出する
→ 購入品(モータ・シリンダ・ベアリング等)はカタログ定価を使う
→ 実際の仕入れ値に「調達マージン(5〜15%)」を加算する
② 素材の場合は重量単価から計算する
→ 鋼材:約100〜150円/kg(市況で変動)
→ アルミ材:約500〜600円/kg(市況で変動)
→ 重量 × 単価で素材費を算出 → 切断・加工費を加算
【外注費の見積もり方】
① 実際に工場に見積もりをとる(最も正確)
② 過去の実績から概算する(スピードが必要な場合)
③ 外注費には「管理費(5〜10%)」を上乗せする
→ 外注管理の工数・リスクを費用に反映させる
見積もりで失敗しないポイント
リスクバッファを必ず入れる
【工数が増える要因(経験から)】
・仕様変更・要求変更の対応
・干渉チェックのやり直し
・設計レビューの指摘対応
・図面修正・差し替え対応
・工場からの問い合わせ対応
→ これらは必ず発生する。バッファなしで見積もると確実に赤字になる。
見積もり前に「スコープ」を明確にする
【見積もり前に確認すること】
□ 設計範囲はどこまでか(レイアウト設計のみ?部品図まで?)
□ 使用するCADソフトは何か(指定があれば追加費用になる場合あり)
□ 提出する成果物は何か(3Dデータ・2D図面・部品表・計算書)
□ 設計変更は何回まで見積もりに含まれるか
□ 客先の設計レビューへの参加は含まれるか
→ スコープが曖昧なまま受注すると、際限なく作業が増える
安売りしない
【安値受注のリスク】
・利益が出ないと次の仕事に回せる資金・時間がなくなる
・「安い設計者」というポジションは後から変えにくい
・品質を担保するには適正な時間と費用が必要
→ 単価を上げるより、受注する仕事の質・量を選ぶほうが長続きする
まとめ表
| 見積もり項目 | 考え方 | よくある失敗 |
|---|---|---|
| 設計工数 | タスク分解して積み上げ | 感覚で概算してしまう |
| 時間単価 | 経験・専門性に応じて設定 | 相場より大幅に低く設定してしまう |
| リスクバッファ | 工数の10〜20%を加算 | バッファゼロで見積もって赤字に |
| 材料費 | 定価+調達マージン | 仕入れ値だけで計算して損をする |
| スコープ定義 | 受注前に成果物・範囲を明確化 | 曖昧なまま受注して追加作業が発生 |
見積もりは「自分の仕事の値札を自分でつける」作業です。最初は難しく感じますが、積み上げの習慣をつければ精度は上がっていきます。
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