機械設計の公差とは?現場で使う基本の考え方
はじめに
図面に書かれた寸法には、必ず「ばらつきの許容範囲」がある。これが公差だ。
「φ50±0.05」と書かれていれば、直径49.95mmから50.05mmの範囲であれば合格ということだ。
しかし設計の現場では、この公差の「設定の意味」を理解せずに使っているケースが意外と多い。
「とりあえず厳しめにしておく」「前の図面をそのまま流用する」——これが積み重なると、コスト超過や機能不良につながる。
この記事では、機械設計における公差の基本的な考え方を整理する。
公差がなぜ必要か
理想的には、図面通りの寸法で部品ができあがれば問題ない。
しかし現実の加工では、材料のばらつき・工具の摩耗・熱変形などによって、必ず誤差が生じる。
この「避けられない誤差」をどこまで許容するかを決めるのが公差だ。
公差を設定することで:
– 検査の合否基準が明確になる
– 加工業者が「どこまでの精度で作ればいいか」を判断できる
– 部品間の組み合わせ(はめあい)が確実に機能する
公差の種類——まず2つを理解する
①寸法公差
寸法そのものに対するばらつきの許容範囲だ。
表記例:φ50 ±0.05
意味:49.95mm〜50.05mmの範囲が合格
上限と下限を別々に書く場合もある。
表記例:φ50 +0.05 / -0.02
意味:49.98mm〜50.05mmの範囲が合格
②幾何公差
形状・姿勢・位置などに関するばらつきの許容範囲だ。
「真円度」「平行度」「直角度」「位置度」などがある。
寸法は正確でも、形状が歪んでいたり、位置がずれていたりすることがある。
それを制御するのが幾何公差だ。
はめあいの基本——「すきまばめ・しまりばめ・中間ばめ」
機械設計でよく使われる公差の概念が「はめあい」だ。
軸と穴を組み合わせるとき、その寸法関係によって3種類に分類される。
| 種類 | 特徴 | 用途例 |
|---|---|---|
| すきまばめ | 軸が穴より細い(隙間が生まれる) | 回転する軸受まわり |
| しまりばめ | 軸が穴より太い(圧入が必要) | ギアのキー溝など固定部 |
| 中間ばめ | 隙間が生まれることも圧入が必要なこともある | 位置決めピンなど |
JIS規格では、軸と穴の公差クラスの組み合わせで、はめあいの種類が決まる仕組みになっている。
たとえば「H7/g6」という表記が図面にあれば、それが公差クラスの指定だ。
公差を設定するときの考え方
「機能から逆算する」が原則
公差は「機能上、どこまでのばらつきを許容できるか」から逆算して決める。
よくあるミス:「厳しくしておけば安心」
このやり方だと、不必要に加工コストが上がる。
正しいアプローチ:
1. この部品の機能を確認する(何をするための部品か)
2. 機能を果たすために必要な精度を判断する
3. その精度を実現できる公差値を設定する
「加工方法と公差の関係」を知る
公差の数値は、加工方法によって実現できる精度の限界がある。
一般的な目安:
| 加工方法 | 実現できる精度の目安 |
|---|---|
| 旋盤・フライス加工 | ±0.1〜±0.05mm程度 |
| 研削加工 | ±0.01mm程度 |
| ラッピング | ±0.001mm程度 |
これより厳しい公差を指定すると、コストが跳ね上がるか、加工業者から「この精度は出せない」と言われる。
まとめ
| 項目 | 要点 |
|---|---|
| 公差とは | 寸法のばらつきの許容範囲 |
| なぜ必要か | 加工には必ず誤差が生じるから |
| 種類 | 寸法公差・幾何公差 |
| はめあい | すきまばめ・しまりばめ・中間ばめ |
| 設定の考え方 | 機能から逆算・加工方法の限界を知る |
公差は「正確に作るための指示」ではなく「ばらつきを設計でコントロールするための手段」だ。
この視点で図面を見ると、公差の意味が読めるようになってくる。
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公差とは何かを一言で——初心者向けの定義と読み方
「公差とは何か」を一言でいえば、図面寸法に対して許される“ばらつきの幅”のことだ。
たとえば「φ50 ±0.05」なら、49.95mm〜50.05mmの0.1mm幅が公差であり、この範囲内なら合格品になる。完璧に50.00mmで作る必要はない、というのが公差の考え方の出発点だ。
公差の表記は読み方を知っていれば一瞬で判断できる。
| 表記例 | 読み方 | 合格範囲 |
|---|---|---|
| 50 ±0.1 | 上下対称公差 | 49.9〜50.1mm |
| 50 +0.2 / 0 | プラス側のみ | 50.0〜50.2mm |
| 50 0 / -0.3 | マイナス側のみ | 49.7〜50.0mm |
| φ50H7 | はめあい記号(穴基準) | JIS表で数値を引く |
新人がまず混乱するのが「±がついていない普通寸法」だ。これはJIS B 0405の普通公差(一般公差)が適用される。図面の表題欄に「普通公差 JIS B 0405-m(中級)」などと書かれていれば、寸法ごとに公差を書かなくても等級表から自動的に許容差が決まる仕組みだ。
公差の決め方——現場で使える3ステップ
「公差 決め方」で最も大事なのは、勘で厳しくするのではなく機能から逆算することだ。現場で再現できる手順に落とすと、次の3ステップになる。
STEP1:その寸法が「機能寸法」かどうかを判定する
すべての寸法に厳しい公差はいらない。相手部品と組み合う・運動する・シールするなど、機能に直結する寸法だけが「機能寸法」だ。
機能寸法には個別公差を、それ以外は普通公差(JIS B 0405)に任せる。これだけで図面の見やすさとコストが大きく変わる。
STEP2:必要精度を数値化する
「ガタが0.1mm以下に収まればいい」「圧入で抜けなければいい」など、機能要求を具体的な数値に翻訳する。ここで初めて公差幅が決まる。
STEP3:加工方法で実現可能か照合する
決めた公差が加工方法の実力(旋盤±0.05、研削±0.01など)に収まるか確認する。実力を超える公差は、コスト急増か「作れない」という回答になって返ってくる。
| 判断 | 厳しすぎる公差の弊害 | 緩すぎる公差の弊害 |
|---|---|---|
| コスト | 加工費・検査費が増大 | 低コスト |
| 品質 | 過剰品質 | 機能不良・組付不良 |
| 納期 | 歩留り低下で遅延 | 安定 |
はめあい公差の決め方——H7/g6など記号の読み方
「はめあい 公差」は軸と穴の寸法関係をJIS記号で指定する仕組みだ。アルファベットが公差域の位置、数字が公差の等級(ITグレード)を表す。
| はめあい記号 | 種類 | 代表的な用途 |
|---|---|---|
| H7/g6 | すきまばめ | 滑り軸受・回転する軸 |
| H7/h6 | すきまばめ(最小すきま) | 位置決め・着脱する部品 |
| H7/k6 | 中間ばめ | 軽い位置決めピン |
| H7/p6 | しまりばめ | ベアリング外輪・圧入固定 |
読み方のコツは「大文字=穴、小文字=軸」と覚えること。穴基準(H基準)で軸側の記号を選ぶのが日本の機械設計では一般的だ。
迷ったら「回るならg6、止めるならp6、位置決めならh6」という3パターンを起点にすると、はめあい公差の決め方で大きく外すことはない。
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よくある質問
Q. 公差とはどういう意味ですか?
A. 公差とは寸法のばらつきの許容範囲のことです。例えば「50±0.1mm」という公差は、49.9〜50.1mmの範囲であれば合格という意味です。製造時の誤差を考慮して適切な公差を設定することが設計者の重要な仕事です。
Q. 公差の決め方がわかりません。どうすればいいですか?
A. ①機能上必要な精度を考える②加工方法の精度を確認する③経済的な加工コストを考慮する——という順番で決めるのが基本です。最初は類似部品の図面を参考にしながら、先輩に確認を取る習慣をつけましょう。
Q. はめあい公差(H7/f6など)の読み方がわかりません。
A. 大文字(H)が穴側、小文字(f)が軸側の公差域クラスを示します。数字(7, 6)は精度等級(IT等級)です。H7/g6はすきまばめ、H7/k6は中間ばめ、H7/p6はしまりばめの代表的な組み合わせです。
Q. 公差とは何ですか?初心者にもわかるように教えてください。
A. 公差とは、図面寸法に許される「ばらつきの幅」のことです。φ50±0.05なら49.95〜50.05mmの範囲が合格で、ぴったり50.00mmで作る必要はありません。加工には必ず誤差が出るため、どこまで許すかを決めるのが公差です。
Q. 公差の決め方の基本的な手順を教えてください。
A. ①その寸法が機能に直結する機能寸法か判定する②必要精度を数値化する③加工方法で実現可能か照合する、の3ステップです。勘で厳しくせず機能から逆算するのが原則で、機能寸法以外は普通公差(JIS B 0405)に任せます。
Q. はめあい公差のH7/g6はどう読めばいいですか?
A. 大文字Hが穴、小文字gが軸を表し、数字は公差等級です。H7/g6はすきまばめで、回転する軸や滑り軸受に使います。穴基準(H基準)で軸側の記号を選ぶのが一般的で、回すならg6・止めるならp6・位置決めならh6が起点になります。
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