はじめに
機械部品は、一度の荷重では壊れない場合でも、繰り返し荷重が加わり続けることで破壊することがあります。これが「疲労破壊」です。
疲労破壊は予告なく突然起きることが多く、静的強度の計算だけでは防ぎきれないため、設計者として基本を理解しておくことが重要です。
疲労破壊とは
疲労破壊のメカニズム:
1. 応力集中部(ノッチ・穴・キー溝・溶接止端等)に
微小なき裂が発生する
2. 繰り返し荷重によってき裂が少しずつ進展する
3. 断面積が減少し、最終的に急激に破断する
特徴:
・破面に「ビーチマーク(貝殻状の縞模様)」が現れる
→ き裂が進展した跡
・破断後の破面は一部が平滑、残りが粗い
(平滑部:疲労進展部、粗い部分:最終破断部)
疲労強度の基本概念
疲労限度(Endurance Limit):
繰り返し荷重を無限回(10⁷回以上)加えても
破壊しない最大応力振幅のこと
S-N曲線(応力-寿命曲線):
横軸:繰り返し数(N)
縦軸:応力振幅(S)
→ 同じ材料でも応力が高いほど短命に破壊する
疲労限度の目安(炭素鋼):
完全対称繰り返し疲労限度 σ_w ≈ 引張強さ × 0.45〜0.5
例:S45C(σB = 690MPa)→ σ_w ≈ 310〜345MPa
疲労強度に影響する要因
①応力集中
ノッチ・穴・段差・キー溝のある箇所に応力が集中する
→ 応力集中係数α(または疲労ノッチ係数β)で評価する
→ コーナーRを大きくすることで応力集中が減る
②表面粗さ
表面が粗いほど疲労強度が低下する(表面を起点にき裂が発生)
→ 高疲労荷重部品の表面仕上げは重要
③平均応力
引張の平均応力があると疲労強度が低下する
圧縮の残留応力があると疲労強度が上がる
→ ショットピーニング・表面硬化処理は圧縮残留応力を付与する
④寸法効果
部品が大きいほど疲労強度が低下する(大型部品は注意)
⑤表面処理
浸炭・窒化処理は疲労強度を大幅に向上させる
疲労設計の実践ポイント
ポイント①:応力集中部のRを大きくする
→ 段差部・穴端部のコーナーRは可能な限り大きくする
→ 鋭い角は作らない
ポイント②:表面仕上げに気を配る
→ 繰り返し荷重がかかる面は仕上げ粗度を指定する
ポイント③:溶接ビードの位置に注意
→ 溶接止端部は応力集中の起点になりやすい
→ 高荷重部への溶接継手は避けるか、止端処理(グラインダー仕上げ)を指示する
ポイント④:安全率を大きめに取る
→ 疲労強度は材料・加工・表面状態のばらつきが大きい
→ 安全率は静的強度より大きく取る(2〜3程度)
ポイント⑤:変動荷重を把握する
→ 最大荷重だけでなく「荷重の繰り返し数」を設計条件に含める
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