はじめに
設計の失敗の多くは「何を設計するか」が曖昧なまま作業を始めることから起きます。
「客先の要求を設計仕様に落とし込む」作業は、設計者が一人で抱え込みやすい部分ですが、ここをしっかり固めることが後の手戻りを最小化する最大の投資です。
要求仕様と設計仕様の違い
要求仕様(RD:Requirements Document):
「何をしてほしいか」を書いたもの(顧客・上流が定義)
→ 「○○できること」「○○の環境で動くこと」
→ 機能・性能・制約を言葉で表したもの
設計仕様(DS:Design Specification):
「どのように実現するか」を設計者が具体化したもの
→ 寸法・材質・強度・精度・機構の種類
→ 数値・図・リストで表したもの
例:
要求仕様「100kgの製品を持ち上げられること」
設計仕様「リフト荷重:1,200N(安全率1.2)、
シリンダー推力:1,500N以上、
使用シリンダー:φ63、ストローク300mm」
要求仕様を受け取ったときの整理手順
STEP1:要求を5つの観点で分類する
①機能要求(何ができなければならないか)
②性能要求(どのくらいのレベルか)
③制約条件(守らなければならない制限)
④環境条件(使用される環境)
⑤インターフェース条件(他システムとの接続条件)
STEP2:曖昧な表現を数値化する
「軽くすること」→「質量○○kg以下」
「早く動くこと」→「サイクルタイム○○秒以内」
「錆びないこと」→「使用環境○○での耐食性:SUS304以上」
STEP3:「測れる形」にする
設計仕様は後で確認・検証できる形にする。
→ 「強くする」ではなく「安全率3以上」
→ 「精度よく」ではなく「位置決め精度±0.1mm以内」
要求が不明確なときの対処
よくある状況:
「要求仕様書がない」
「仕様書はあるが曖昧」
「口頭で要求を受けた」
対処法:
①自分で仮仕様を作って確認する
→「こういう仕様で設計を進めます」と文書で提示し、
承認を得る
②「確認事項リスト」を作る
→ 不明確な項目をリストにして
一度に客先・上司に確認する
③「決めるべき条件」を明示する
→ 「この部分の仕様が決まらないと設計が進められません」
と期限付きで確認を求める
設計仕様書の構成例
設計仕様書に含めるべき内容:
1. 装置概要・目的
2. 機能仕様
(何ができるか、何の用途か)
3. 性能仕様
(処理能力・精度・サイクルタイム等)
4. 機械的仕様
(外形寸法・質量・取付条件)
5. 環境仕様
(温度・湿度・粉塵・防水等級)
6. 安全仕様
(非常停止・安全装置・適用規格)
7. ユーティリティ
(電源・エア・水の種類と容量)
8. 検証方法
(仕様を何で確認するか)
9. 除外事項
(この装置の対象外であることを明記)
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