はじめに
品質不具合が発生したとき、設計者がどう動くかで、その後の収束速度が大きく変わります。
私はこれまで、製造工程での加工不良・組み立て後の干渉・稼働後の強度不足など、さまざまな品質不具合に関わってきました。最初の頃は焦るばかりで対応が後手後手に回りましたが、経験を重ねるうちに「考え方の型」が身についてきました。
この記事では、設計者として品質不具合に向き合うときの考え方を整理します。
不具合発生時の初動対応
不具合が発覚した直後の「最初の1時間」の動き方が、その後の対応の質を決めます。
【初動の3ステップ】
ステップ①:現象を正確に把握する
→ 「何が・どこで・いつ・どのくらいの頻度で」起きているかを確認する
→ 思い込みで判断せず、実物・現場・データで確認する
→ 写真・動画・寸法データを記録する(証拠保全)
ステップ②:暫定処置を講じる
→ 現時点でできる「被害の拡大を防ぐ処置」を最速で実行する
→ 例:問題ロットの出荷停止・生産ラインの停止・使用制限の通知
→ 暫定処置は「根本解決ではない」ことを関係者に明示する
ステップ③:影響範囲を確認する
→ 同じ設計が他の機種・他のプロジェクトにも使われていないか確認する
→ 過去の納入品にも同様の問題がないか確認する
根本原因の探り方
暫定処置の後は、「なぜ不具合が起きたか」の根本原因を追究します。
なぜなぜ分析の進め方
【なぜなぜ分析の例】
不具合:搬送フレームの溶接部が破損した
なぜ①:溶接部に過大な応力が集中していたから
なぜ②:設計時に繰り返し荷重(疲労)を考慮していなかったから
なぜ③:仕様確認時に荷重の変動条件を確認していなかったから
なぜ④:仕様確認のチェックリストに「荷重条件の確認」がなかったから
なぜ⑤:チェックリストが実態の業務内容に追いついていなかったから
根本原因:チェックリストの更新運用ルールがなかった
対策:チェックリストをプロジェクト後に見直す運用ルールを制定する
【なぜなぜ分析のポイント】
・「なぜ」は5回を目安に繰り返す(3〜7回が適切)
・現象(何が起きたか)と原因(なぜ起きたか)を混同しない
・「担当者のうっかり」で止めない → 仕組みの問題に落とし込む
・「なぜ」を進めるたびに、証拠・データで裏付ける
再発防止の設計変更・標準化
根本原因が特定できたら、同じ不具合が二度と起きないための対策を実施します。
設計変更
【設計変更で対処する例】
・形状変更:応力集中部にフィレット・リブを追加する
・材質変更:強度不足だった材料を高強度材に変更する
・板厚変更:強度計算の結果に基づいて板厚を上げる
・溶接変更:隅肉溶接を完全溶け込み溶接に変更する
・公差変更:嵌め合い不良が原因の場合は公差を見直す
ポイント:
→ 変更した理由・変更前後の比較を設計変更管理シートに記録する
→ 設計変更後は、変更前と同様の使用条件での検証(試験・解析)を行う
標準化・ルール化
【設計ミスを再発させないための標準化】
□ チェックリストに今回の不具合パターンを追加する
□ 設計ガイドライン(社内標準)に注意事項を追記する
□ 類似設計のレビューポイントに「この不具合と同様の条件確認」を加える
□ 他の設計者と不具合事例を共有する(ナレッジ共有)
不具合対応でやってはいけないこと
【設計者として避けるべき行動】
× 現場に行かずに「たぶんこうだろう」と推測で判断する
→ 必ず現物・現場・現実(三現主義)で確認する
× 責任回避のために情報を隠す・小さく見せる
→ 早期共有・早期対処のほうが被害が小さくなる
× 暫定処置で「解決した」と思い込んで根本原因を追わない
→ 暫定処置は応急処置。必ず根本原因まで追いかける
× 再発防止策を「注意します」で終わらせる
→ 個人の注意に頼る対策は再発する。仕組みで防ぐ対策にする
まとめ表
| フェーズ | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 初動対応 | 現象把握・暫定処置・影響範囲確認 | 現物確認・証拠保全を最優先に |
| 根本原因分析 | なぜなぜ分析・データ裏付け | 個人ミスで止めず仕組みの問題に落とす |
| 再発防止 | 設計変更・チェックリスト更新 | 変更理由を記録・他設計者とも共有 |
| NG行動 | 推測判断・情報隠蔽・注意だけの対策 | やると被害が広がる・信頼を失う |
品質不具合は、設計力を上げる最大のチャンスでもあります。「不具合を自分の財産にする」という気持ちで向き合うことが、長期的な設計力の向上につながります。
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