はじめに
高価なPLMシステムやプロジェクト管理ツールがなくても、Excelで十分に設計業務を管理できます。
私はこれまで複数の現場で、Excelで作った管理シートを使いながら設計業務を回してきました。ポイントは「シンプルで続けられること」です。
この記事では、私が実際に現場で使ってきた3つのExcelシートを紹介します。
シート①:部品表(BOM)シート
部品表は設計の中心的な管理資料です。図面と連動した部品表があれば、製造・購買・品質管理との連携が格段にスムーズになります。
【BOMシートの基本項目】
列名 内容
----------- -----------------------------------------------
部品番号 図面番号と対応した一意の番号(例:ASM-001-001)
部品名 部品の名称(日本語・英語)
数量 1台あたりの使用個数
材質 素材・規格(例:SS400、SUS304、A6061)
表面処理 メッキ・塗装・熱処理など
調達区分 自製 / 購入品 / 外注
備考 特記事項(発注先・標準品番など)
改訂フラグ 最新改訂がある場合にマーク
【Excelの便利機能】
→ 調達区分にドロップダウンリストを設定する
→ 改訂フラグのある行を条件付き書式で色付けすると視認性が上がる
シート②:設計変更管理シート
設計変更は必ず発生します。変更の履歴を一元管理するシートがあれば、「何がいつ変わったか」をすぐに追跡できます。
【設計変更管理シートの基本項目】
列名 内容
------------- -----------------------------------------------
変更番号 ECR番号・変更の通し番号
発行日 変更要求が出た日
完了日 変更対応が完了した日
対象図面番号 変更した図面の番号
変更内容 具体的な変更内容(何を・なぜ・どう変えたか)
変更理由 設計変更の原因(設計ミス・仕様変更・コストダウン等)
影響範囲 他の図面・部品表・関連設計への影響
担当者 変更対応した設計者名
ステータス 対応中 / 完了 / 保留
【Excelの便利機能】
→ ステータスにドロップダウンリスト(対応中・完了・保留)を設定する
→ 「対応中」の行に条件付き書式で黄色ハイライトをつけると見落としを防げる
→ フィルター機能で「担当者別」「対象図面別」に絞り込める
シート③:設計チェックリストシート
設計ミスの多くは「同じパターンで繰り返す」という特徴があります。チェックリストシートは、この繰り返しミスを防ぐための最も有効なツールです。
【設計チェックリストの構成例(製缶物設計)】
カテゴリ チェック項目 チェック
--------- ----------------------------------------- ------
形状設計 溶接スペースが確保されているか □
溶接後加工が必要な箇所に加工代があるか □
板厚は荷重・用途に適切か □
図面記入 溶接記号はJIS Z 3021に準拠しているか □
表面処理の指示は記入されているか □
材質・規格は記入されているか □
公差・精度 取り付け穴の位置精度は適切か □
公差は加工方法に見合っているか □
その他 BOMと図面の部品番号・名称は一致しているか □
重量の概算計算を行ったか □
【Excelの便利機能】
→ チェック列にドロップダウン(○ / × / N/A)を設定する
→ 未チェック項目を条件付き書式で赤くすると提出前のミスに気づける
→ プロジェクトごとにシートをコピーして使い回す
Excelシートを使い続けるためのコツ
【長続きするツールにするための3原則】
① 入力項目を必要最小限にする
→ 項目が多すぎると入力が面倒になり、使われなくなる
→ まず7〜10項目から始めて、必要に応じて追加する
② 更新のタイミングを決める
→ 「設計変更が発生したらその日中に更新する」ルールを作る
→ 週1回まとめて更新するより、都度更新のほうが漏れが少ない
③ 定期的に見直す
→ プロジェクト終了時に「使いにくかった項目」を削除・改善する
→ ミスが発覚したらチェックリストに追加する
まとめ表
| シート名 | 主な用途 | 主な利用者 | 重要な機能 |
|---|---|---|---|
| BOMシート | 部品情報の一元管理 | 設計・購買・製造 | ドロップダウン・条件付き書式 |
| 設計変更管理シート | 変更の追跡・記録 | 設計・品質・PM | フィルター・ステータス管理 |
| チェックリストシート | 設計ミスの防止 | 設計者自身 | 条件付き書式・コピー運用 |
Excelツールは「作って満足」ではなく「使い続けること」に価値があります。シンプルに始めて、現場の実態に合わせて育てていくことが長続きの秘訣です。
設計×現場ラボ|機械設計の実務知識を、現場目線で発信しています。


