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CAD形状をCAE解析用に簡略化するモデリングのコツ——メッシュが割れない形状データの作り方

CAD形状をCAE解析用に簡略化するモデリングのコツ——メッシュが割れない形状データの作り方 実務ノウハウ

構造解析を依頼したCAE担当者から「メッシュがうまく切れないので形状を直してほしい」と差し戻された経験は、機械設計者なら一度はあるはずだ。設計用の3Dモデルをそのまま解析にかけると、細かなフィレットやねじ穴が原因でメッシュ生成が失敗することが多い。20年間の設計現場で数えきれないほど経験してきた、CAE解析にかけやすい形状データを作るための実践的なコツを、具体的な事例とともに紹介する。

設計モデルと解析モデルは目的が違うと理解する

私が若手の頃、構造解析を依頼する際に設計データをそのまま渡してしまい、CAE担当者から「これでは要素分割ができない」と何度も突き返された経験がある。当時の私は、精緻に作り込んだ設計モデルほど解析にも適していると素朴に考えていたが、実際には逆で、設計上の意匠や機能を表現するために付けた細部の形状が、メッシュ生成の妨げになることの方がはるかに多い。

設計モデルは、実際に製造される部品の形状を寸法や公差まで含めて正確に表現することが目的だ。一方で解析モデルは、応力や変位といった物理量を精度よく計算することが目的であり、結果に影響を与えない微小な形状は思い切って省略した方が、解析の安定性も計算時間も改善される。この目的の違いを理解しないまま設計モデルをそのまま流用しようとすると、無駄な試行錯誤に多くの時間を費やすことになりかねない。

私はこの経験から、解析を依頼する際には最初から「解析専用の簡略化モデル」を別途用意するという方針に切り替えた。設計モデルを直接編集して壊さないよう、コピーしたモデルの上で簡略化を施していく。最初は二重管理の手間を感じたが、簡略化の過程で設計モデルを誤って壊してしまうリスクを避けられる上、簡略化の履歴も残せるため、結果的にこの方が安全で効率的だと、長年の経験を通じて確信するようになった。

CAE担当者と早い段階でコミュニケーションを取ることも欠かせない。私が経験した現場では、解析担当者がどこまでの簡略化を許容できるか、逆にどの形状は絶対に省略してはいけないかという判断基準を、設計者側が正確に把握していないまま作業を進めてしまい、何度もやり取りが往復するという非効率が生じていた。今では解析を依頼する前に、対象部位の重要度や着目したい応力箇所を確認し、その情報をもとに簡略化の方針を決めるようにしている。

こうしたやり取りを重ねる中で、私は簡略化の方針そのものを設計者とCAE担当者の共通ドキュメントとして残しておくことの重要性にも気づいた。口頭でのやり取りだけでは、後から「なぜこの箇所を簡略化したのか」という経緯が追いにくくなる。私は簡略化を行った箇所とその理由を簡単なリストにまとめ、解析データと一緒に保管するようにしている。これにより、後任者が解析結果を再利用する際にも、モデル化の前提条件を正確に理解した上で判断できるようになる。

微小フィレット・面取りの除去基準

CAEのメッシュ生成において最もトラブルの原因になりやすいのが、微小なフィレットや面取りである。設計上は安全に配慮してあらゆる角に小さなフィレットを付けているが、これらは応力集中の評価が目的でない限り、解析結果への影響がほとんどないことが多い。私が担当した架台の応力解析では、全体で数百箇所ある微小フィレットのうち、着目したい応力集中部位以外のものをすべて除去することで、メッシュ生成にかかる時間を大幅に短縮することができた。

フィレットや面取りを除去する際の判断基準として、私は「解析でメッシュサイズとして設定する要素サイズより小さい形状は基本的にすべて除去する」というルールを一つの目安にしている。要素サイズが5ミリ程度であれば、半径1ミリ程度のフィレットはメッシュに反映されないか、反映されたとしても不必要に細かい要素を生成する原因になるだけで、結果への寄与はほとんどない。このルールをチームの共通基準として設定してからは、除去すべき形状かどうかの判断に迷う時間が大きく減った。

ただし、応力集中を評価したい箇所については、これとは話がまったく別になる。私が経験した破断解析の案件では、実際に破損が発生した箇所のフィレット半径をあえて正確にモデル化し、その周辺だけメッシュを細かく切ることで、実機で観測された応力集中の傾向を再現することができた。全体を一律に簡略化するのではなく、着目箇所とそれ以外とでモデル化の精度にメリハリをつけることが、効率よく精度の高い解析を行うコツだと考えている。

除去作業を実際に行う際には、CADの直接編集機能(フェース削除やフィーチャー抑制)を活用すると効率がよい。私は履歴ベースのモデルであれば、フィレットフィーチャーをまとめて抑制することで一括除去し、インポートした形状データなど履歴を持たないモデルであれば、直接編集機能でフェースを削除してから周辺面を修復するという使い分けをしている。この使い分けを知らないと、一つずつ手作業で面を削除する非効率な作業に陥りがちだ。

面を削除した後の周辺面の修復がうまくいかない場合、私はいったん削除範囲を広げて単純な形状に戻してから、必要な範囲だけ再構築するという手順を踏むことが多い。無理に元の複雑な形状を保ったまま部分修復しようとすると、かえって面のつながりが破綻してエラーが多発することがある。多少大胆に形状を作り直す判断をした方が、結果的に短時間で健全なモデルに仕上げられるという場面を何度も経験してきた。

ねじ穴・段付き穴の簡略化テクニック

ねじ穴やざぐり穴、段付き穴といった細かい形状も、メッシュ生成を妨げる代表的な要因だ。特にねじ山を忠実にモデル化した部品を解析にかけようとすると、螺旋形状に沿った複雑な曲面のためにメッシュが破綻しやすい。私が扱ってきた現場では、ねじ穴は単純な円筒穴として簡略化し、必要であれば断面積の減少分を補正係数として別途考慮するという方法が一般的だった。

段付き穴についても、荷重経路に直接関係しない部分であれば、単純な貫通穴やブラインド穴に置き換えることで、メッシュ全体の複雑さを大きく減らすことができる。私が担当したブラケットの解析では、複数の段付き穴を持つ部品を扱った際、着目する応力箇所から離れた穴はすべて単純な円筒穴に置き換え、着目箇所の穴だけ実形状に近い形でモデル化するという方針を取った。この使い分けによって、解析の精度を保ちながら計算時間を実用的な範囲に収めることができた。

穴を完全に埋めてしまうという選択肢も、場合によっては有効だ。私が経験した全体変形量を確認するだけの粗い解析では、荷重経路上にない小さな配線穴や取付穴をすべて埋めてモデルを作成し、大まかな傾向を素早く把握することを優先した。目的が局所的な応力評価ではなく全体的な剛性傾向の把握であれば、こうした思い切った簡略化が解析全体の効率を大きく高めてくれる。

ねじ穴の簡略化を行う際には、実際のねじ締結による予圧や接触状態をどう表現するかも合わせて検討する必要がある。私が経験した案件では、単純化したモデルにボルトの締結力を集中荷重として与えることで、実際のねじ山形状を再現しなくても、ボルト周辺の変形傾向をおおむね再現できることを確認した。簡略化した形状であっても、荷重条件や境界条件の設定を工夫することで、実用上十分な精度を確保できる場合が多いというのが私の経験則だ。

ボルト穴周辺の簡略化については、CAEソフトによってはボルトコネクタやビーム要素といった専用の機能が用意されていることもある。私が扱ったソフトウェアでは、ボルト位置に軸方向のビーム要素を配置し、締結する二枚の板をそのビーム要素で連結するという表現方法が使えた。実際のねじ山をモデル化する手間をかけずに、締結による剛性の伝達をある程度正確に再現できるこの手法は、複数のボルト締結箇所を持つ大規模なアセンブリ解析で特に威力を発揮すると感じている。こうした専用機能の存在をあらかじめ知っているかどうかだけでも、実際のモデル化にかかる工数は大きく変わってくるものだと感じている。

薄板・シェル要素への置き換え判断

板金部品や薄肉の構造体を解析する場合、ソリッド要素でそのままモデル化するとメッシュ数が膨大になり、計算時間が非現実的なレベルまで膨れ上がることがある。こうしたケースでは、板厚方向を厚みパラメータとして扱うシェル要素に置き換えることで、計算効率を大幅に改善できる。私が担当したカバー部品の振動解析では、当初ソリッド要素でモデル化しようとしたところ計算が収束せず、シェル要素に置き換えることで現実的な時間内に結果を得ることができた。

シェル要素への置き換えを判断する際、私が目安にしているのは板厚と代表寸法の比率だ。板厚が代表寸法の20分の1以下であれば、多くの場合シェル要素での近似が妥当な精度を保てるとされている。この目安を超えて厚みが大きい部分については、無理にシェル要素化せず、部分的にソリッド要素を残すハイブリッドなモデル化を検討する必要がある。

シェル要素への置き換え作業自体も、単純に中立面を抽出すればよいというわけではない。私が経験した案件では、板厚が部位によって変化する部品をシェル化する際、中立面の抽出が自動では正しく行われず、手作業で面を選定し直す必要があった。特にリブや補強板が交差する部分では、中立面同士の接続関係を人の目で確認しながら修正する作業が欠かせない。この手作業の工数を見込んでおかないと、解析スケジュール全体に影響が出てしまう。

シェル要素を用いた解析結果を評価する際には、実際の板厚情報が正しく反映されているかを必ず確認するようにしている。私が過去に経験した失敗では、シェル要素に設定した板厚パラメータが一部の面で誤って設定されており、剛性が実際よりも低く評価されてしまうという事故があった。この経験以降、シェル化したモデルについては、代表的な断面で板厚設定を目視確認する工程を必ず解析前チェックリストに加えるようにしている。

シェル要素のオフセット方向(中立面から見て板厚をどちら向きに配置するか)についても、見落とされがちな設定項目だ。私が経験した案件では、複数の板金部品が組み合わさるアセンブリで、それぞれの板のオフセット方向を統一しておかないと、実際には接触しているはずの面同士が解析モデル上では離れてしまうという問題が発生した。この設定を誤ると、接触条件がうまく機能せず、解析結果が実態とかけ離れたものになってしまうため、シェル化した部品を組み合わせる際には特に注意深く確認するようにしている。

アセンブリ形状の接触条件と簡略化の両立

複数部品からなるアセンブリを解析する場合、部品間の接触条件をどのように設定するかが、形状そのものの簡略化と同じくらい重要な検討事項になってくる。私が担当した装置全体の変形解析では、実際にはボルト締結されている部品同士を完全拘束(バインド)として扱うか、接触条件として扱うかによって結果が大きく変わることを何度も経験した。安易にすべての接続箇所を完全拘束にしてしまうと、実際の挙動よりも剛性を高く評価してしまう危険がある。

接触条件を細かく設定しすぎると、今度は計算が非線形問題として扱われるため、収束性が悪化し計算時間が大幅に増加するというトレードオフもある。私はこのバランスを取るために、着目したい変形モードに直接関係する接触面だけは実際の接触条件として設定し、それ以外の部分は簡略化して完全拘束または一体化してモデル化するという方針を採用している。すべてを忠実に再現しようとせず、解析の目的に応じてモデル化の精度に意図的なメリハリをつけて使い分ける姿勢が、実務上は何よりも重要だと感じている。

アセンブリを簡略化する際には、そもそも解析対象から除外してよい部品がないかも検討する。私が担当した案件では、配線やケーブル、装飾的なカバー類など、構造的な剛性にほとんど寄与しない部品を解析モデルから除外することで、モデル全体の複雑さを大きく減らすことができた。どの部品を残しどの部品を除外するかの判断は、事前にCAE担当者と相談しながら決めることで、後から「重要な部品が抜けていた」という手戻りを防げる。

部品を除外する判断において、私が特に注意しているのは、質量や重心位置への影響だ。振動解析や動的な解析を行う場合、構造的な剛性には寄与しなくても、質量として無視できない部品を除外してしまうと、固有振動数の計算結果に誤差が生じることがある。私は除外した部品の質量を集中質点として代替配置するなど、剛性は簡略化しつつ質量の影響は極力保持するという工夫を行うようにしている。この配慮を怠ると、静的な変形解析では問題にならなくても、動的な解析では無視できない誤差につながる場合がある。

簡略化モデルの妥当性検証を怠らない

どれだけ丁寧に簡略化を行っても、それが解析結果として妥当なものになっているかを検証する工程を省いてはいけないと私は考えている。簡略化によって形状が実物と乖離しすぎていないか、境界条件や荷重条件が現実的な状態を反映しているかを、解析結果を鵜呑みにする前に必ず確認する必要がある。

私が実践しているのは、可能な限り簡易的な手計算や過去の類似案件の実測データと解析結果を突き合わせる作業だ。単純な梁として近似した手計算結果と、詳細な解析結果とのオーダーが大きく食い違っていないかを確認するだけでも、モデル化の誤りに早期に気づける場合が多い。私が過去に経験した案件では、この突き合わせ作業によって、境界条件の設定ミス(固定すべき箇所を誤って自由端にしていた)を解析結果が出た直後に発見でき、大きな手戻りを防ぐことができた。

変位や応力の分布図を目視で確認する際にも、私は必ず「常識的に見て違和感がないか」という観点でチェックするようにしている。荷重を受けているはずの箇所とは無関係な場所に応力集中が現れていたり、変形の方向が力学的に説明できない向きになっていたりする場合、多くは境界条件や荷重条件、あるいは簡略化した形状のどこかに誤りが潜んでいる。数値そのものの大小だけでなく、分布のパターンが力学的に妥当かどうかを見る習慣は、簡略化モデルに限らずあらゆる解析結果の検証に共通して役立つ視点だと考えている。

簡略化と検証のサイクルを繰り返すことは、地道で時間のかかる作業に見えるかもしれない。しかし、簡略化の妥当性を検証せずに進めた解析結果をもとに設計判断を下してしまうと、実機でのトラブルという形でより大きな代償を払うことになりかねない。私は解析結果を関係者に説明する際には、必ずどのような簡略化を行い、その妥当性をどう確認したかをセットで伝えるようにしている。

こうした検証の積み重ねは、一件一件の解析にとどまらず、組織全体のCAE活用力を底上げすることにもつながると私は考えている。私が過去に関わった現場では、簡略化の判断基準や検証手順が個人の経験則に留まっており、担当者が変わるたびに同じような試行錯誤が繰り返されていた。そこで簡略化の基本方針や除去基準、検証の進め方を簡単な社内資料としてまとめ、設計者間で共有する取り組みを提案したことがある。属人化しがちなノウハウを言語化して残すことが、CAE解析の精度と効率を長期的に高めていく上で欠かせない取り組みだと、これまでの経験を通じて強く感じている。この説明責任を果たす姿勢が、解析結果に対する信頼性を高め、設計判断の質を支えていると考えている。

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