はじめに
鋳造は、溶かした金属を型に流し込んで成形する加工方法です。
複雑な形状を一体で作れる反面、「型から抜く」という制約があるため、設計段階で鋳造特有のルールを守る必要があります。
この記事では、鋳造部品の設計で特に重要な抜き勾配・鋳造R・肉厚の3つを中心に解説します。
鋳造の主な種類
“`
砂型鋳造(Sand Casting):
砂で作った型に溶湯を流す / 大型・少量生産に向く
表面粗さ:粗い / 公差:大きめ
ダイカスト(Die Casting):
金型(鋼製)に高圧で圧入 / 小〜中型・量産に向く
アルミ・亜鉛合金が多い / 高精度・高速
ロストワックス(精密鋳造):
ワックス原型を鋳包む / 複雑形状・高精度
コストが高い / 航空宇宙・医療に多い
“`
一般的な機械部品では砂型鋳造・ダイカストが多く使われます。
設計ポイント①:抜き勾配
型から鋳物を取り出すには、型に当たる全ての面に傾き(抜き勾配)が必要です。
“`
【抜き勾配の目安】
砂型鋳造:内面 1〜3°、外面 0.5〜2°
ダイカスト:内面 0.5〜2°、外面 0.3〜1°
【勾配がない面とは】
型の開き方向(抜き方向)と平行な面
→ この面だけは勾配不要
【勾配が必要な面】
型の開き方向に対して垂直な面(内側のキャビティの壁)
→ この面には必ず勾配を付ける
【設計の確認方法】
3D CADでドラフト解析機能を使うと
「勾配不足の面」を色分けで確認できる
→ SolidWorksは Evaluate → Draft Analysis
“`
設計ポイント②:鋳造R(フィレット・コーナーR)
鋳造部品のコーナーには必ずRが必要です。
“`
【Rが必要な理由】
内コーナーのシャープな角:
→ 応力集中により割れが発生しやすい
→ 型への充填性が悪くなる(溶湯が流れにくい)
→ 型が損傷しやすい
外コーナーのシャープな角:
→ 部品を取り出すときに引っかかりやすい
→ 落としたときに欠けやすい
【Rの目安(砂型鋳造)】
内コーナー:3〜6mm以上(肉厚の1/3〜1/2程度)
外コーナー:1〜3mm程度
【Rの目安(ダイカスト)】
内コーナー:1〜3mm程度
外コーナー:0.5〜1mm程度
→ 加工先・型メーカーに確認して最終値を決める
“`
設計ポイント③:肉厚の均一化
鋳造でも「肉厚の均一性」は重要です。
“`
【肉厚差による問題】
厚い部分は冷却が遅い
→ 収縮による「引け巣(空洞)」が発生しやすい
→ 薄い部分が先に固まり、厚い部分と強度差が生まれる
【設計の基本方針】
肉厚はできるだけ均一にする
やむを得ず肉厚差がある場合:
→ 緩やかに厚さが変化するテーパーをつける
→ 急激な肉厚変化は避ける
【最小肉厚の目安】
砂型鋳造:4〜6mm程度
ダイカスト:1.5〜3mm程度(材料・サイズによる)
“`
加工代の考慮
鋳造後に機械加工(切削・研削)する面には、加工代(削り代)が必要です。
“`
【加工代の目安(砂型鋳造)】
小物(200mm以下):2〜4mm
中物(200〜500mm):3〜6mm
大物(500mm以上):4〜10mm
【図面での指示方法】
「加工仕上げ面」を図面上で明示する
→ 表面粗さ記号を加工面のみに記入する
→ 未加工面は「鋳肌」であることを示す
□ 加工代を考慮した鋳造形状になっているか確認する
“`
アンダーカットへの対処
“`
【アンダーカットとは】
型の開き方向に対して「引っかかり」になる形状
【解決策】
分割型(入れ子)を使う:
引っかかる部分を別の可動型(コア)で対応する
→ 型の構造が複雑になりコストが上がる
形状を変更する:
アンダーカットがない形状に設計変更する(最も確実)
→ アンダーカットが必要な場合は、早期に型メーカーと相談する
“`
鋳造設計チェックリスト
“`
□ 全ての面に適切な抜き勾配がついているか
□ 内コーナー・外コーナーに鋳造Rがついているか
□ 肉厚は均一か、または緩やかなテーパーで変化しているか
□ 最小肉厚を下回っていないか
□ 加工面に適切な加工代を確保しているか
□ アンダーカットがないか(あれば対処方法を決めているか)
□ 型分割線の位置は外観・機能上問題ないか
“`
*設計×現場ラボ|機械設計の実務知識を、現場目線で発信しています。*



コメント