はじめに
細長い柱やシャフトに圧縮荷重をかけたとき、材料の降伏応力に達する前に突然横に曲がって壊れる現象を「座屈」といいます。
座屈は予告なく起きる危険な破壊形態であり、引張・曲げとは異なる専用の評価が必要です。
座屈とは
座屈が起きる条件:
・細長い部材(柱・シャフト・薄肉構造等)
・圧縮荷重が加わる
座屈の特徴:
・材料の降伏応力より低い応力で起きる場合がある
・突然・急激に変形が大きくなる(不安定現象)
・引張強度の計算だけでは見逃す
代表的な例:
・長い柱が圧縮荷重で横に曲がる(長柱の座屈)
・薄い板が圧縮で波打つ(板の座屈)
・薄肉円筒が外圧で潰れる(シェルの座屈)
オイラーの座屈荷重
長柱の弾性座屈荷重(オイラー荷重):
P_cr = π² × E × I / (l_k)²
P_cr:座屈荷重(N)
E:縦弾性係数(鋼:206,000 N/mm²)
I:断面二次モーメント(mm⁴)
l_k:座屈有効長さ(mm)
座屈有効長さ l_k:
両端ピン支持:l_k = l(実長)
一端固定・他端自由:l_k = 2l
両端固定:l_k = 0.5l
一端固定・他端ピン:l_k = 0.7l
【例題】
鋼製の丸棒 直径d=20mm、長さl=500mm、両端ピン支持
I = π×d⁴/64 = π×20⁴/64 ≈ 7,854 mm⁴
P_cr = π² × 206,000 × 7,854 / 500²
= 9.87 × 206,000 × 7,854 / 250,000
≈ 63,800 N ≈ 63.8 kN
細長比と座屈モードの判定
細長比 λ = l_k / i
i:断面二次半径 = √(I/A)
A:断面積
細長比による分類:
λ > 100程度:長柱(弾性座屈)
→ オイラー式が適用できる
λ = 60〜100程度:中間柱(弾性・塑性の遷移領域)
→ テトマイヤー式・ランキン式等を使う
λ < 60程度:短柱(塑性変形・圧縮強度で評価)
→ 圧縮降伏応力で評価する
実務では:
細長比を計算して長柱か短柱かを判定した上で
適切な評価式を使う
設計での対策
対策①:断面形状を工夫する(断面二次モーメントを大きくする)
→ 丸棒より角管・I断面の方が座屈に強い
→ 同じ断面積でも、材料を外側に配置すると有利
対策②:有効長さを短くする(中間支持を設ける)
→ 長い柱の中間に支点を設けると座屈荷重が大幅に上がる
→ l_k が半分になるとP_crは4倍になる
対策③:細長比を適正値以下に抑える
→ 設計段階で細長比が100を超えないようにする
→ 超える場合は断面を大きくするか支点を追加する
対策④:座屈に対しても安全率を設ける
→ 使用荷重 ≤ P_cr / 安全率(一般的に3〜5程度)
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