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熱処理と機械部品設計——材料の特性を引き出すための知識

熱処理と機械部品設計——材料の特性を引き出すための知識 実務ノウハウ

はじめに

「S45C材に焼き入れ・焼き戻し処理」「SCM415に浸炭焼き入れ」——設計図面に熱処理指示を書く機会は多いですが、熱処理がどのような効果をもたらすかを理解して指示を出せているでしょうか。

熱処理の目的と種類を知ることで、設計の完成度が上がります。

熱処理の目的

熱処理は材料の組織を変化させて、

機械的性質(硬さ・強度・靭性・耐摩耗性)を調整する技術。

主な目的:

①硬度を上げる(耐摩耗性・強度の向上)

②軟化させる(加工性の改善・内部応力の除去)

③靭性を持たせる(衝撃に強くする)

④表面だけを硬化させる(芯部は粘り強さを保つ)

代表的な熱処理の種類

【焼き入れ(Quenching)】

加熱後に急冷して硬化させる。

→ 硬度が最大になるが、脆くなる(靭性低下)

→ 通常は焼き戻しとセットで行う

【焼き戻し(Tempering)】

焼き入れ後に低温で再加熱する。

→ 硬度はやや下がるが靭性が回復する

→ 「焼き入れ・焼き戻し」をセットで「調質」とも呼ぶ

【焼きなまし(Annealing)】

加熱後にゆっくり冷やす。

→ 材料を軟化させる。加工前・応力除去に使う

【焼きならし(Normalizing)】

加熱後に空冷する。

→ 組織を均一化する。鋳造・溶接後のひずみ除去に使う

【浸炭焼き入れ(Carburizing)】

低炭素鋼の表面に炭素を浸透させてから焼き入れ。

→ 表面は高硬度・芯部は粘り強い(歯車・軸等に最適)

【窒化処理(Nitriding)】

表面に窒素を浸透させて硬化させる。

→ 焼き入れより硬化深さは浅いが、寸法変化が極めて少ない

→ 精密部品・型に向く

設計でよく使う鋼材と熱処理の組み合わせ

S45C(機械構造用炭素鋼):

→ 焼き入れ・焼き戻しで硬度HRC20〜35程度

→ 汎用部品・軸・ギヤ(低〜中負荷)

SCM415(クロムモリブデン鋼):

→ 浸炭焼き入れで表面HRC58〜62、芯部は靭性を保つ

→ 高負荷歯車・カム・ピン

SCM440(クロムモリブデン鋼):

→ 調質で引張強さ980MPa以上

→ 高強度軸・ボルト

SKD11(ダイス鋼):

→ 焼き入れでHRC58〜62

→ プレス型・治具の摺動部

SKH51(高速度鋼):

→ 焼き入れでHRC63〜65

→ 切削工具・ドリル・エンドミル

熱処理に関する設計注意点

注意①:寸法変化を見込む

→ 焼き入れ・浸炭焼き入れは変形・寸法変化が起きる

→ 公差が厳しい面は熱処理後に研削・仕上げ加工する

→ 図面に「熱処理後仕上げ」の指示を入れる

注意②:形状による焼き割れリスク

→ 肉厚の変化が急激な形状(鋭い角・急変部)は焼き割れしやすい

→ コーナーにR・面取りを設けて応力集中を防ぐ

注意③:硬度指示の記載方法

→ 図面には「硬度HRC20〜30」のように範囲で指示する

→ 処理の種類(焼き入れ・浸炭等)も明示する

注意④:処理深さの指示

→ 浸炭・窒化では「有効硬化深さ○○mm以上」と指示する

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