はじめに
「軽くしたい」「錆びさせたくない」という設計要求があるとき、アルミ合金は有力な選択肢です。
ただし「アルミは鉄より柔らかい」だけの理解では、設計ミスが起きます。
この記事では、設計者が知っておくべきアルミ合金の種類・特性・設計上の注意点を解説します。
アルミ合金の種類と用途
アルミ合金は添加元素によって特性が異なる。
JIS規格では4桁の数字で種類を表す。
A1000系(純アルミ):
強度は低いが、成形性・耐食性・電気伝導性が高い
→ 食品容器・電線・熱交換器フィン
A2000系(アルミ+銅):
強度が高いが、耐食性が低い(ジュラルミン)
→ 航空機構造材
A5000系(アルミ+マグネシウム):
強度・耐食性・溶接性のバランスが良い
→ 船舶・圧力容器・構造材(最もよく使われるシリーズ)
A6000系(アルミ+マグネシウム+シリコン):
押出加工性が良く、構造部材に多用される
→ サッシ・構造フレーム・自動車部品
A7000系(アルミ+亜鉛):
最高強度クラス(超ジュラルミン・超超ジュラルミン)
→ 航空機・スポーツ用品
鉄との主な違い
比重:
アルミ:2.7 / 鉄:7.8
→ アルミは鉄の約1/3の重量
ヤング率(剛性):
アルミ:70GPa / 鉄:206GPa
→ アルミは鉄の約1/3の剛性
→ 同じ形状では3倍たわみやすい
→ 軽量化には断面形状(I型・箱型)の工夫が必要
熱膨張係数:
アルミ:23×10⁻⁶/°C / 鉄:12×10⁻⁶/°C
→ アルミは鉄の約2倍膨張する
→ 組み合わせ使用時の公差設計に注意
耐食性:
アルミは表面に酸化皮膜(不動態膜)を形成して錆びにくい
→ ただし塩水・アルカリには弱い
表面処理
アルミの主な表面処理:
陽極酸化処理(アルマイト):
電解処理で酸化皮膜を厚くする
→ 硬度・耐食性・絶縁性が向上
→ 染色も可能(装飾目的)
→ 処理後に寸法が変化する(片側約0.01〜0.02mm増加)
硬質アルマイト(硬質陽極酸化):
厚い酸化皮膜(HV300〜500程度)を形成
→ 耐摩耗性が要求される摺動部品に使用
クロメート処理(化成処理):
薄い化成被膜を形成する防食処理
→ 電気電導性を保ちながら耐食性を付与
アルミ設計の注意点
注意①:ねじ穴の強度
アルミの引張強さは鉄の約半分〜1/3
→ ねじ締結力はボルト材質に合わせて計算する
→ ヘリサート(鋼製スプリングインサート)を入れると強度が上がる
注意②:電食(ガルバニックコロージョン)
アルミと銅・真鍮を直接接触させると電食が起きる
→ 異種金属間には絶縁材を介在させる
注意③:切削加工性
アルミは刃物への溶着(構成刃先)が起きやすい
→ 切削速度を上げる・専用工具を使う
→ 図面に「アルミ用エンドミル使用」などの注記は不要だが、
加工者との打ち合わせで確認する
注意④:溶接性
A5000系は溶接性が良い
A6000系・A7000系は溶接割れが起きやすい素材がある
→ 溶接が必要な部位はA5000系を使う
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