はじめに
機械設計者は「形状を考える人」ですが、加工者が作れない形状を設計してしまうと、手戻りと余計なコストが発生します。
切削加工の制約を設計段階で理解しておくことが、現場に迷惑をかけない設計の第一歩です。
切削加工の種類と特徴
【旋盤加工(旋削)】
丸物部品(シャフト・ブッシュ等)を回転させて外径・内径・端面を削る
→ 円筒・円錐・球面などの回転形状が得意
→ 原則として「回転対称形状」を作る加工
【フライス加工(ミリング)】
エンドミル・フライスを回転させて平面・溝・ポケットを削る
→ 直角・斜面・自由曲面の加工が可能
【ボール盤・マシニング加工(穴あけ)】
ドリルで穴を開ける
→ 標準径の貫通穴・止まり穴が基本
【研削加工(グラインディング)】
砥石で高精度・高面粗度の仕上げ加工
→ 熱処理後の精密仕上げに使う
旋削加工の設計ポイント
①貫通穴と止まり穴の底形状
ドリル加工の底はテーパー状(先端角118°が標準)になる
→ 「底面が平ら」が必要な場合は、
先にドリルで下穴を開けてからエンドミルで平底加工
→ 図面では「底面平底指示」が必要
②キリ穴の直径
標準ドリル径(JIS規格)に合わせる
→ 非標準径は専用工具が必要で高コスト
→ 例:9.5mmより10mmの方が安い・速い
③内径の深穴
深穴は加工が難しい(工具たわみ・切りくず排出の問題)
→ 「深さ/径」比(L/D比)は通常5以下が望ましい
④キー溝
シャフトのキー溝はエンドミルで加工する
→ 溝端部はエンドミルのRになる(角は作れない)
→ 「角Rあり」を許容するか、溝端部を平底逃がし穴にする
フライス加工の設計ポイント
①コーナー部の形状
内側コーナーはエンドミルのRが残る
→ 「内コーナーを直角」にしたい場合は加工が難しい
→ 合わせる部品に逃がし溝(アンダーカット)を設ける
→ または内コーナーRを許容する(図面にR指示)
②深い溝・深いポケット
深い加工は工具が細長くなるほどたわみ・ビビりが起きやすい
→ 幅に対して深さが深すぎる形状(深さ/幅 > 2〜3)は加工難度が上がる
③細い壁・細いリブ
薄肉部分は切削中の切削力で変形・振動する
→ 壁厚は最低でも2〜3mm以上を確保する
④テーパー穴・斜め穴
斜め穴はドリルが滑って中心がずれやすい
→ 「ドリリングジグ使用」「事前のセンタードリル使用」で対応
→ 設計上は避けられるなら直角穴の方が安価・精度が出やすい
仕上げ指示と公差の関係
加工精度と仕上げ記号の目安:
Ra25(▽1つ):旋削・フライスの一般加工面
Ra6.3(▽2つ):旋削・フライスの通常仕上げ面
Ra1.6(▽3つ):研削・精密フライス仕上げ面
Ra0.8(▽4つ):研削・ラップ仕上げ
コスト関係:
Ra1.6以上の仕上げ指定は加工工数が上がる
→ 機能上必要な面だけに指定する
→ 「全面Ra1.6」は必要がなければ使わない
公差との関係:
IT7〜IT8公差(e.g., H7, h6)→ Ra1.6程度の仕上げが必要
IT9〜IT10公差(e.g., H9)→ Ra3.2程度で実現可能
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