はじめに
溶接継手の強度を正しく評価できると、「溶接サイズを大きくしすぎる(過剰設計)」や「小さすぎて破壊する」設計ミスを防げます。
この記事では、現場でよく使われるすみ肉溶接の強度計算を中心に解説します。
溶接継手の種類と強度
主な溶接継手の種類:
突合せ溶接(グルーブ溶接):
板材を端面で突き合わせて溶接する
→ 完全溶込み溶接では母材と同等の強度が得られる
→ 強度が重要な部位(主桁・高応力部)に使う
すみ肉溶接(フィレット溶接):
部材のコーナーを溶接する
→ 最も一般的な溶接形態
→ 引張・せん断・曲げ荷重に対する評価が必要
すみ肉溶接の基本計算
【のど断面でのせん断応力評価】
すみ肉溶接の強度は「のど断面」(喉断面)で評価する。
のど断面積 A = a × L
a:のど厚(= 脚長S × cos45° ≈ 0.707 × S)
L:溶接長さ(mm)
せん断応力 τ = F / A = F / (a × L)
許容せん断応力 τ_a(目安):
一般的な構造用鋼(SM400等)の溶接部
→ τ_a = 100〜130 N/mm²(荷重条件・規格による)
【例題】
脚長S=8mm、溶接長L=100mm、荷重F=40kNの場合:
a = 0.707 × 8 = 5.66mm
A = 5.66 × 100 = 566mm²
τ = 40,000 / 566 ≈ 70.7 N/mm²
→ τ_a = 130 N/mm²以下であれば合格
曲げ荷重がかかる場合
溶接部に曲げモーメントが作用する場合:
溶接群の断面係数 Z_w を用いて
曲げ応力 σ = M / Z_w を計算する。
組み合わせ応力(引張+せん断)の場合:
合成応力 σ_combined = √(σ² + 3τ²) ≤ 許容応力
【実務での対応】
実際の計算は参考書・設計ガイド(JIS・WES等)を参照する。
メーカーの溶接強度計算ツールや
CAE解析を補助的に使うことも多い。
溶接サイズ(脚長)の決め方
【板厚と脚長の関係】
板厚が薄い方の部材の板厚を基準に脚長を決める。
目安:脚長S ≥ 薄い方の板厚 × 0.7
最小脚長(JIS規格・参考値):
板厚6mm以下 → S ≥ 3mm
板厚6〜12mm → S ≥ 4〜5mm
板厚12〜25mm → S ≥ 6mm
実際の設計では:
①必要な強度から計算で脚長を求める
②最小脚長以上であることを確認する
③溶接変形・母材への熱影響を考慮して過剰に大きくしすぎない
設計でよくある失敗
失敗①:溶接長さが短い
「端面だけ少し溶接」では全長溶接の数分の1の強度しかない
→ 有効溶接長を計算に反映する
失敗②:脚長が小さい
「ちょっとつけておけばいい」では荷重に耐えられない
→ 計算で脚長を決めて図面に明記する
失敗③:溶接部に集中荷重がかかる設計
溶接部の直上に曲げ荷重を集中させると破壊しやすい
→ 力の流れを分散させる設計を心がける
失敗④:連続溶接と断続溶接の使い分けを誤る
強度が必要な部位に断続溶接(間欠溶接)を使うと強度不足になる
→ 構造強度が必要な部位は連続溶接を使う
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