🌎 Read in English — Mechanical Design articles for global engineers

非破壊検査の基礎——UT・MT・PT・RTの使い分け

実務ノウハウ

はじめに

機械設計者として20年、外部設計事務所の社員として大手メーカー数社に常駐してきた。

設計品をどう「壊れていないか確認するか」は、図面に検査指示を入れる立場として常に頭にある。

非破壊検査(NDT: Non-Destructive Testing)と言うと、検査屋さんの世界という印象を持つかもしれないが、設計者がどの検査をどこに指示するかを決めなければ何も始まらない。

若い頃、溶接部のRT指示(放射線透過試験)を忘れて図面を出し、現場で「これUTで代替できますか」と聞かれて返答に詰まったことがある。検査の中身を理解していなかったのが原因だった。

この記事では、UT・MT・PT・RTという主要な非破壊検査4種の原理・適用範囲・使い分けを、現場で図面を引く設計者の目線で整理する。

非破壊検査の全体像

非破壊検査は、製品を壊さずに内部または表面の欠陥を検出する技術。

JIS Z 2300〜2400番台に各種規格があり、認証技能者(JIS Z 2305またはISO 9712)が実施する。

主要な5種類は以下の通り。

略号 検査名 主な検出対象 代表規格
UT 超音波探傷試験 内部欠陥(割れ、ブローホール) JIS Z 3060
MT 磁粉探傷試験 表面・直下の割れ(磁性体のみ) JIS Z 2320
PT 浸透探傷試験 表面開口欠陥(全材料) JIS Z 2343
RT 放射線透過試験 内部欠陥(写真記録) JIS Z 3104
ET 渦電流探傷試験 表面・直下欠陥(細管・棒材) JIS Z 2316

設計者として図面に書くのは主にUT・MT・PT・RTの4つ。それぞれの本質を見ていく。

UT(超音波探傷試験)——内部欠陥を音で見る

UTは超音波(一般的に2〜5MHz)を材料に入射し、欠陥や裏面からの反射波を受信して欠陥位置・大きさを推定する。

原理

探触子(プローブ)から超音波パルスを発射、底面エコーと欠陥エコーの位置・高さで判定。

垂直探傷は厚さ計測や内部割れ検出、斜角探傷は溶接部の割れ検出に使う。

適用と限界

  • **得意**:厚物の内部欠陥、溶接部の内部割れ、薄い部品の厚さ測定
  • **苦手**:形状複雑な部品、薄板(板厚3mm以下は厳しい)、粗い結晶組織(鋳鉄、ステンレス)

設計者として書くべき指示

「JIS Z 3060 試験等級B」「合格基準A1」のように、規格・等級・合格基準を明記。

重要溶接部なら「100%UT」、抜き取りなら「20%UT、不合格時は範囲拡大」のように頻度も指定する。

私が現場で常駐していた重機メーカーでは、ブームの主要溶接部はすべて100%UT、その他は20%抜き取りという基準だった。

メーカー

超音波探傷器はオリンパス、コクサイエレクトリック、東芝検査ソリューションズ、神鋼検査サービスなどが供給。

試験は外部検査会社(コベルコ科研、神鋼テクノ、IHI検査計測等)に出すケースが多い。

MT(磁粉探傷試験)——表面の割れを磁粉で浮かせる

MTは磁性体(鉄鋼)の表面・直下の割れを、磁化+磁粉で検出する。

原理

被検査体を磁化させると、欠陥部に漏洩磁束が発生する。

ここに蛍光磁粉や黒色磁粉を散布すると、欠陥線上に磁粉が吸着して目視できる。

適用と限界

  • **得意**:磁性体の表面割れ、特に溶接部の表面割れ、鋳物の表面欠陥
  • **苦手**:非磁性体(オーステナイト系SUS、アルミ、銅、樹脂)には**使えない**
  • 表面塗装の上からは検出感度が下がる

私の現場での使い方

クレーンフックや吊りピン、レイデン受け、シャフトキー溝の入隅など、応力集中部の表面割れを点検するときに重宝する。

定期点検では蛍光磁粉+ブラックライトで暗室検査するのが主流。

外部設計で常駐していた製鉄機械メーカーでは、年次点検でロールチョックのキー溝MTを必ずやっていた。

表面のひびを早期発見すれば、破断前に対策できる。

設計図面への指示

「JIS Z 2320-1 試験方法E(極間法)、磁束密度0.8T以上、合格基準クラス1」など。

点検要領書に検査箇所図を添付するのが普通。

装置

携帯型の極間式磁化器(マーク・ステーン社、東京特殊電線、栄進化学等)が現場の主力。

据置型のコイル式は工場の検査ライン用。

PT(浸透探傷試験)——浸透液で表面開口を可視化

PTは材料を選ばず、表面に開口している欠陥を検出する。

原理

1. 被検査面を清浄化

2. 浸透液(赤色染色または蛍光)を塗布、5〜30分浸透

3. 余剰浸透液を拭き取り

4. 現像剤(白色粉末)を塗布

5. 欠陥部から染み出した浸透液で赤線(または蛍光線)が浮き上がる

適用と限界

  • **得意**:全材料(金属・樹脂・セラミック)の表面開口欠陥
  • **苦手**:内部欠陥は不検出、多孔質材は不適、塗装面は不適

MTは磁性体のみ、PTは全材料という棲み分けで覚えると分かりやすい。

現場での実例

SUS304の溶接部表面検査ではMTが使えないのでPTが基本。

配管溶接部、ステンレスタンクの溶接部、樹脂部品の割れ検査などに使う。

私が常駐したある食品機械メーカーでは、SUS溶接部はすべてPT 100%が標準。

食品接液部は割れがあれば異物混入リスクがあるからだ。

設計指示

「JIS Z 2343 試験方法II(溶剤除去性)、合格基準クラス1」のように規格を明示。

スプレー缶式の浸透液(マークテック、栄進化学、田中三次郎商店)が現場では一般的。

RT(放射線透過試験)——内部欠陥を写真で残す

RTはX線またはγ線を材料に透過させ、フィルムやデジタル検出器で内部欠陥を写真記録する。

原理

放射線が材料を透過する際、欠陥部(空気を含む)では減衰が少ないため、フィルム上に黒く写る。

ブローホール、スラグ巻き込み、未溶着、割れなどが検出可能。

適用と限界

  • **得意**:溶接部の内部欠陥、特にブローホール・スラグ・未溶着、**証拠写真として残せる**
  • **苦手**:割れがX線方向に平行だと検出困難、厚物(板厚100mm超)はコバルト60が必要、放射線管理区域が必要

RTとUTの使い分け

項目 RT UT
検出感度 ブローホール得意 割れ得意
記録性 フィルムが永久記録 デジタルデータのみ
コスト 高い(フィルム・現像・管理) 比較的安い
安全管理 放射線管理必要 不要
現場性 一旦停止が必要 リアルタイム

設計図面への指示

「JIS Z 3104 透過写真等級2類以上、撮影割合100%」のように指示。

高圧ガス保安法、労働安全衛生法でRT義務付け部位(圧力容器、第一種圧力容器)は法規制があるので、設計初期で確認する。

ボイラー・圧力容器メーカーで常駐していた頃は、第一種圧力容器の長手溶接部は100%RT、周溶接部は10%抜き取りという日本溶接協会のWES規格に従って設計していた。

設計者として4種の使い分け判断軸

20年現場で図面に検査指示を入れてきた経験から、判断軸を整理する。

判断軸①:何を検出したいか

  • **内部欠陥** → UTまたはRT
  • **表面欠陥** → MT(磁性体)またはPT(非磁性体含む)

判断軸②:材質は何か

  • **磁性体(鉄鋼)** → MT使える、UT・RT・PT全て可
  • **非磁性体(SUS、アルミ、樹脂)** → MT不可、PT・UT・RT検討

判断軸③:記録性が必要か

  • **法規制・契約上の記録要** → RT(フィルム永久保存)
  • **記録不要、判定のみ** → UT、MT、PT

判断軸④:板厚

  • **厚物(10mm以上)** → UTまたはRT
  • **薄物(3mm以下)** → RT、PT(UTは厳しい)

判断軸⑤:コストと現場制約

  • **量産品・コスト最優先** → MT or PT
  • **重要部品・少量・高品質要求** → UT or RT

実際の現場では、これらを組み合わせる。

例:圧力容器の長手溶接は「外面MT+RT100%」、配管溶接は「PT+抜き取りRT」、回転軸は「磨き加工後MT+UT」など。

私が現場で失敗した例

冒頭にも触れたが、若手の頃、ある架台の溶接指示で「RT 100%」と書くべきところを書き忘れて図面を出した。

現場の検査担当から「これUTで代替できますか」と聞かれ、私はRTとUTの違いを十分理解しておらず、即答できなかった。

結局、上司に確認して「割れ重視ならUT、ブローホール重視ならRT」と教わり、その場面ではUT指示で進めた。

このとき覚えたのが、「設計者が検査の中身を知らないと、現場が困る」ということ。

図面に「JIS Z 3104」とだけ書くのではなく、なぜRTなのか、何を検出したいのかを自分の言葉で説明できることが大事だ。

おわりに

非破壊検査は、設計者が「壊れないものを作った」ことを確認するための最後の砦だ。

材料選定や強度計算と同じくらい、検査指示も設計者の責任だと私は思っている。

UT・MT・PT・RT、それぞれに得意・不得意がある。

材料、欠陥位置、コスト、記録性で使い分ける。

迷ったら、神鋼テクノやコベルコ科研、IHI検査計測などの専門検査会社に相談すれば、最適な手法を提案してくれる。

検査を「他人任せ」にせず、設計者が判断して指示する

それが現場で信頼される設計者の条件だと、20年やってきて感じている。

設計×現場ラボ|sekkei-tech.com

コメント

タイトルとURLをコピーしました