はじめに
私が個人事業主として独立したのは、機械設計の仕事に就いてから数年が経った頃のことです。
「独立したい」という気持ちはあっても、「手続きが複雑そうで何から始めればいいかわからない」という不安が先に立つ人は多いと思います。
実際にやってみると、最低限の手続きはそれほど難しくありませんでした。この記事では、機械設計者が個人事業主として独立するときに必要な手続きを、経験ベースで整理します。
最初にやること:開業届の提出
個人事業主として事業を始めたら、税務署に「開業届」を提出する必要があります。
【開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)】
提出先:住所地を管轄する税務署
提出期限:事業開始から1ヶ月以内(遅れても受理される)
費用:無料
提出方法:窓口持参・郵送・e-Tax(マイナンバーカードがあればオンライン可)
必要な記載事項:
・氏名・住所・マイナンバー
・屋号(なくても可)
・業種・事業の概要(例:「機械設計業」)
・開業日
開業届と同時に、青色申告承認申請書も提出することを強くすすめます。
【青色申告承認申請書】
提出期限:開業から2ヶ月以内(年の途中開業の場合)
または開業年の3月15日まで(翌年分から適用の場合)
青色申告のメリット:
・青色申告特別控除(最大65万円)が受けられる
・赤字を3年間繰り越せる
・家族への給与を経費にできる(青色事業専従者給与)
→ 白色申告より手間は増えるが、税負担が大きく下がる
→ 会計ソフトを使えば青色申告の帳簿管理はさほど難しくない
社会保険・健康保険の切り替え
会社員を退職して独立する場合、健康保険と年金の切り替えが必要です。
【健康保険の選択肢】
① 国民健康保険(市区町村の窓口で加入)
→ 退職後14日以内に手続き
→ 保険料は前年の所得をベースに計算(独立初年度は高めになりやすい)
② 健康保険の任意継続(元の会社の健康保険を継続)
→ 退職後20日以内に申請
→ 最大2年間継続できる
→ 保険料の会社負担分がなくなるため、保険料が上がる場合が多い
③ 家族の扶養に入る(条件あり)
→ 収入が一定以下の場合に利用可能
【年金】
→ 国民年金に切り替える(退職後14日以内に市区町村窓口で手続き)
→ 国民年金基金・iDeCo(個人型確定拠出年金)で上乗せする選択肢もある
最初に揃えるべきもの
独立後、業務をスムーズに進めるために最初から準備しておくと良いものがあります。
【口座・カード】
□ 事業用銀行口座を開設する
→ 個人の生活費と事業収支を分けることが帳簿管理の基本
→ 屋号付き口座が理想(ゆうちょ・ネット銀行でも可)
□ 事業用クレジットカードを作る
→ 経費の支払いをカードに集約すると帳簿が楽になる
→ 独立直後は会社員時代よりも審査が通りにくい場合がある
→ 退職前に申し込んでおくと確実
【会計ソフト】
□ クラウド会計ソフトを導入する
→ freee・マネーフォワードクラウド・弥生会計オンラインなどが代表的
→ 銀行口座・カードと連携すれば自動仕訳で帳簿が楽になる
→ 月額1,000〜2,000円程度(経費として計上可能)
【印鑑・請求書テンプレート】
□ 角印・丸印を用意する(必須ではないが、あると信頼感がある)
□ 請求書・領収書のテンプレートを用意する
独立後に把握しておくこと
【確定申告】
→ 翌年2月16日〜3月15日に確定申告を行う
→ 青色申告なら事前に帳簿(仕訳)をつけておく必要がある
→ 初年度は税理士に相談するのも選択肢(費用は経費計上可能)
【消費税】
→ 開業から2年間は原則として消費税免税事業者
→ インボイス制度(適格請求書発行事業者)への登録は要検討
→ 取引先がインボイス登録を求める場合は登録が必要になることがある
【小規模企業共済】
→ 個人事業主向けの退職金積立制度
→ 掛金が全額所得控除になる(節税効果が高い)
→ 独立後早めに加入を検討する価値がある
まとめ表
| 手続き | 期限 | 窓口 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 開業届 | 開業後1ヶ月以内 | 税務署 | 忘れずに青色申告申請書も同時提出 |
| 青色申告承認申請書 | 開業後2ヶ月以内 | 税務署 | 65万円控除のために必須 |
| 国民健康保険 | 退職後14日以内 | 市区町村 | 選択肢(任意継続・扶養)と比較検討 |
| 国民年金 | 退職後14日以内 | 市区町村 | iDeCoと組み合わせて老後対策も |
| 事業用口座開設 | なるべく早く | 銀行 | 退職前に申し込むとスムーズ |
| 会計ソフト導入 | 開業時 | 各社 | クラウド型が帳簿管理を楽にする |
独立の手続きは難しくありません。順番に一つずつ進めれば、1〜2週間で必要な準備はほぼ整います。まず開業届と青色申告申請書、この2枚を税務署に持っていくことから始めてください。
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