はじめに
機械装置は動作中に熱を発生させます。その熱を適切に管理しないと、部品の変形・材料強度の低下・電子部品の誤作動・潤滑油の劣化などの問題が起きます。
熱設計は電子機器だけでなく、機械設計者にとっても重要な知識です。
熱が機械設計に影響する場面
熱の影響の例:
①熱膨張による寸法変化
→ アルミは鋼の約2倍の熱膨張係数
→ 精度が必要な箇所で材質が異なると、温度変化で締め付け力・隙間が変わる
②潤滑剤の劣化
→ 高温ではグリス・オイルが早期劣化する
→ 軸受のグリスは使用温度範囲を確認する(一般的なグリスは120°C以下)
③電動機・電子部品の耐熱
→ サーボモーター・インバーターは周囲温度の制限がある
④構造部品の強度低下
→ 鋼は200〜300°C以上で強度が低下し始める
→ アルミは150〜200°C程度から注意が必要
熱伝達の3つの方式
①熱伝導(Conduction)
固体の中を熱が伝わる
→ 熱伝導率(W/m·K)が高いほどよく伝わる
→ 銅(390) > アルミ(200) > 鋼(50) > SUS(16) > 樹脂(0.1〜0.3)
②対流(Convection)
流体(空気・水)が動いて熱を運ぶ
→ 自然対流(ファンなし)と強制対流(ファン・ポンプ使用)
→ 強制対流は自然対流より数倍〜10倍以上の冷却効果
③放射(Radiation)
電磁波で熱を放出する
→ 表面積・表面色(黒色ほど放熱しやすい)が影響する
熱設計の基本的な考え方
熱設計のステップ:
STEP1:熱源を特定する
→ モーター・減速機・ブレーキ・摩擦部など
STEP2:発熱量を把握する
→ カタログ値・損失計算・実測から推定
STEP3:許容温度を確認する
→ 部品・材料・潤滑剤の使用上限温度を調べる
STEP4:放熱経路を設計する
→ 熱がどこからどこへ逃げるか経路を考える
→ 放熱フィン・ヒートシンク・冷却ファン・水冷の選択
STEP5:温度チェック(計算または試験)
→ 熱計算または実機計測で許容範囲内か確認する
放熱対策の手段
【放熱フィン・ヒートシンク】
表面積を増やして自然対流・放射による冷却を促進
→ アルミ製が多い(加工しやすく熱伝導率が高い)
【強制空冷(ファン)】
ファンで空気を強制循環させる
→ 自然対流の5〜10倍の冷却効果
→ ファンのフィルター詰まりに注意(定期清掃が必要)
【水冷】
冷却水を循環させる
→ 大きな発熱量を処理できる
→ 配管・ポンプ・熱交換器が必要でシステムが複雑になる
【断熱・遮熱】
熱源から保護したい部品を断熱材・遮熱板で隔離する
熱膨張を設計に織り込む
線膨張係数の目安(×10⁻⁶/°C):
炭素鋼:11.7
アルミニウム:23.1
SUS304:17.3
熱膨張量 δ = α × L × ΔT
α:線膨張係数 L:部材の長さ(mm) ΔT:温度差(°C)
例:アルミ部品 L=500mm、ΔT=50°Cの場合
δ = 23.1×10⁻⁶ × 500 × 50 ≈ 0.58mm
→ 精度が必要な部位では熱膨張の影響を公差設計に織り込む
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