はじめに
公差は「1つの部品」だけで考えれば比較的シンプルです。
しかし実際の機械では、複数の部品が組み合わさり、それぞれの公差が積み重なって(累積して)最終的な寸法精度が決まります。
この累積を正しく理解していないと、「各部品は図面通りに作られているのに、組み上がると機能しない」という問題が起きます。
累積公差とは何か
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【具体例で理解する】
3つの部品A・B・Cが順番に並んで取り付けられている場合:
[A]──[B]──[C]
A の長さ:100 ± 0.1 mm(公差幅 0.2mm)
B の長さ:50 ± 0.1 mm(公差幅 0.2mm)
C の長さ:80 ± 0.1 mm(公差幅 0.2mm)
全体の長さ = A + B + C = 230mm
全体の公差:± 0.3mm(各部品の公差が最大に積み重なった場合)
= ± (0.1 + 0.1 + 0.1)
→ 公差が3倍に膨らんでいる
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最悪ケース法(Worst Case Method)
最も保守的な計算方法。「最悪の組み合わせ」を想定します。
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【計算式】
累積公差 = 各部品の公差の合計
例:
公差 ±0.1 の部品が4個連続する場合
累積公差 = ±0.4mm
【長所】
計算が簡単
全数が公差内に収まることを保証できる
【短所】
全ての部品が同時に最悪値になる確率は低い
→ 過剰設計・コスト増につながりやすい
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統計的公差計算(RSS法)
現実的な分布を考慮した計算方法。
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【計算式(二乗和平方根法)】
累積公差 = √(各部品の公差の二乗の合計)
例:
公差 ±0.1 の部品が4個連続する場合
累積公差 = √(0.1² + 0.1² + 0.1² + 0.1²)
= √(0.04)
= ±0.2mm
【最悪ケース法との比較】
最悪ケース:±0.4mm
RSS法 :±0.2mm(より小さい公差)
【前提条件】
各部品の寸法が正規分布している
不良率を一定確率(±3σで99.73%)以内で許容する場合に使う
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実務での使い方
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STEP1:寸法チェーンを描く
組み立てた状態で「どの寸法が積み重なるか」を図示する
例:
軸・軸受・ハウジングが組み合わさる場合の
軸端面からハウジング端面までの距離
STEP2:関係する全寸法と公差を洗い出す
STEP3:計算する(最悪ケース or RSS)
STEP4:結果を確認する
累積公差 ≤ 要求精度 → OK(設計で公差を確保できている)
累積公差 > 要求精度 → NG(設計変更が必要)
【NGだった場合の対処】
①各部品の公差を厳しくする(コスト増)
②部品を減らす(設計変更)
③調整機構を設ける(設計変更)
④要求精度を緩和できないか確認する
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累積公差の計算例
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【例:スライド機構のクリアランス確認】
構成:
ハウジング内径: φ50 H8 = φ50 +0.039 / 0
スライドシャフト:φ50 f7 = φ50 -0.025 / -0.050
最大すきま(最もゆるい組み合わせ):
= 穴の最大値 − 軸の最小値
= 50.039 − 49.950
= 0.089mm
最小すきま(最もきつい組み合わせ):
= 穴の最小値 − 軸の最大値
= 50.000 − 49.975
= 0.025mm
→ すきまは 0.025〜0.089mm の範囲に収まる
→ 機能上必要なすきまの範囲内か確認する
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現場で知っておくべきこと
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【重要な原則】
1. 寸法チェーンに入る部品が多いほど累積公差は大きくなる
→ 精度が必要な組み合わせは部品点数を減らす
2. 調整機構(シムなど)を入れると累積公差の影響を吸収できる
→ 高精度要求の組み合わせに有効
3. 重要な寸法チェーンは必ず計算して確認する
→ 「たぶん大丈夫」で済ませない
4. 計算結果は記録に残す
→ 設計変更時に「前の検討」として参照できる
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